休業手当を出す職場。休業手当を出さない職場。
皆様、こんにちは。職サポ 特定社会保険労務士の森川友惠です。お元気でお過ごしでしょうか?緊急事態宣言解除、県をまたぐ移動もOKとなってから約1カ月半。また、新型コロナウィルスが各地域で猛威をふるいはじめました。
ニューノーマル(やたらと耳にしない横文字言葉が増えましたね。…これは新常態という意味)を模索しながら、職場も動きはじめたところ。
皆様の職場は、大きな変化がありましたか?
私も様々な職場と関わりをもって生活しているので、この数カ月は本当に新型コロナウィルスに起因する相談ばかり。そして、3月から5月にかけて多かったのが、この“休業手当”に関係するものでした。
“休業手当を出してくれない”“休業手当の計算がおかしい”から始まって、“そもそも平均賃金の計算方法がわからない”、“休業手当を出さないといけないのか?”と言ったお尋ねまで、実に様々でした。ここで、休業手当の根拠がどこにあるのか確認しておきましょう。
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間
労働基準法第26条
中当該労働者に、その平均賃金の 100 分の 60 以上の手当を支払わなければな
らない。
と定められています。これを簡単にご説明すると、「会社の都合で、事前に会社と労働者で決めてた労働日(所定労働日)に休ませた場合は、会社は最低、平均賃金の60%は払いなさい」という事になります。これを、今回の場合に当てはめて実際に考えてみましょう。
そもそも会社都合ですか?
26条の休業手当は、あくまでも「会社の都合で休ませた場合」に払えということですから、今回のコロナウィルスって、そもそも誰のせいですか?という事なんですよね。しかも、業種によっては各都道府県からは休業要請も出されていた訳ですからね。そんな中、相談に来られたとある会社の社長さん。
“俺がコロナを流行らせた訳じゃないから払わない!”
とおっしゃった方もいらっしゃいましたし、逆に、
“やっぱり、事業を継続的に発展させて行くには人が大切だから、極力いつもと変わらない額は出してあげたい”とおっしゃる方もいらっしゃいました。
私自身は、
・今回は、ほぼ“天災”に近く、会社都合とは言い難いと感じている。ただ、これはあくまでも私見ですし、ご自身でよく考えてご判断いただきたいという事
・国としては雇用を維持するために、休業手当を払ってもらって、『雇用調整助成金』を申請してください。という立場である事
をお伝えするようにしていました。
休業手当を出してくれない!
そして、労働者の方からのご相談で最も多かったのがこの“休業手当を出してくれない”と“休業手当の額がおかしい”というものでした。このご質問に、1番最初にお伝えしたことは、『ノーワーク・ノーペイの原則』と『そもそも、会社都合ですか?』という2点でした。
『働いていないんだから賃金は出ない』という大原則をどこかで置き忘れてしまっている方や、『休業手当を払ってもらって当然』という考えの方が、本当に多かったんです。仕事に対する考え方や価値観は人それぞれですから否定はしませんし、勝手に休まされて賃金を減らされるのに納得いかないお気持ちも十分に分かります。
そして、相談者のほとんどの方通点が、辛い状況とその気持ちを会社にはお伝えになってなかったのです。私は法律の解釈や行政の立場はお伝えできていも(関与先の方ではあれば話は別ですが)皆様が働く職場へ直接アプローチすることはできません。結局、職場に対してなにかしらの行動をとることができるのは、ご本人やその職場で働く従業員の方自身なのです。
職場は誰が作るもの?
職場は確かに「雇用する側」と「雇用される側」で構成されています。「雇用する側」と「雇用される側」が対等の立場で話をするというのは組合でもない限りなかなか難しいという事も理解できます。
ですが、自分の考えを伝えずにいれば、会社側はいつまでたっても変わりませんし、現状の運営を続けるでしょう。まずは、会社側の考えを聞く、自分の考えを伝えるという事からチャレンジしていただきたいと毎回お伝えしています。
そして、このお話しをすると、半数ぐらいの方は
『そんなことを言ったら、会社に目をつけられる。』とか『こんな話をしたら上司に嫌われる』『いえるような職場の雰囲気ではない』という事をおっしゃられるのです。
職場の環境を整え、快適な職場づくりをするのは、会社側の責任でしょう。でも、その職場を作っているのは、働き続けている従業員にだって責任がるのでは?と私は考えます。職場を作るのは労使の共同作業。職場の雰囲気を作るのはその職場に関わる全ての人です。
聞いてもらえる進言をする
私は、前職時代、そして現在も行政機関でも勤務していますかが、ずっと“モノを言う従業員”“モノを言う職員”です。
今は、聞いてもらえる進言ができていますが、前職当時は直情的できつい言い方しかできず、“うるさいやつ”“文句言い”のレッテルは貼られていたのは自覚していますし、使いづらいと思った上司から転勤をさせれるという経験もしてきました。
でも、ちゃんと考えを伝えてきたからこそ、ある程度の立場にいる方とも話ができる機会もありましたし(思いが叶ったり、叶わなかったりでしたけど)、だからこそ、20年以上勤務ができたと思います。
では、聞いてもらえる進言をするためには何が必要だと皆様は考えられますか?
それは、日ごろの関係性。いわゆる“信頼関係”が結べているかどうかです。部下の立場からすれば、“この職場なら何でも言える”“この上司なら話してみたい”と思えるかどうか?上司の立場であれば“何でも言える職場が作れているか”と言った視点で職場を見直されてみてはいかがでしょうか?
有事のこんなときこそ職場の本性が見えます。ピンチはチャンス。見つめなおした先に全員で描く理想の職場が描けますように。
それでは、今回はここまで。