こんな相談を受けました。
“僕はそんなつもりは一切なかったんだよ~”
こんにちは。職サポ特定社会保険労務士の森川友恵です。先日、こんな相談を受けました。
事の発端は、上司にあたる方がひとりの部下を“●●さん”と下の名前で呼びはじめたことです。私自身は仕事の現場で上司にあたる方も部下にあたる方ともどちらも面識があります。
上司は気づく力と行動力でとにかく仕事が早い。一緒に組ませてもらって仕事をしたこともありますが、私にとってはペースが丁度良くて、ノンストレスでサクサクと進む感じが心地良い。
部下にあたる方は、仕事に真摯に取り組む方で、とても素直に受け答えができる方なので、上司はもちろん同僚や後輩、顧客からもすこぶる評判が良いんですよね。だから、このお二人がいる職場に伺うことは、私の関与先ではないのですが、密かな楽しみでした。
ただ、気になっていたのは、上司にあたる方が、この部下だけ、苗字でなく名前にさんをつけて“●●さん”と呼ぶことでした。今年の夏、1度この上司と部下、そこに私が加わって、3人で食事をしたことがあったんですが、この時は、共通の趣味である「読書」でひとしきり盛り上がり、部下の方もとっても楽しそうににされていたのです。なので、あまり気にしないようにしていたのですが、約3か月が経過した本日、部下にあたる方がメンタル疾患で休職されることが決まったと連絡を頂きました。ご本人は、
・自分だけ名前で呼ばれる
・休みの日もSNSで続々連絡がくる
・上司も部下も既婚者だった…。
とにかく上司とコミュニケーションを取ることがつらくて仕方なくなった。出勤したくてもできなくなったお話されました。
そして、上司とも話をしましたが、案の定、第一声は“僕はそんなつもりは一切なかったんだ”でした。
名前を呼んではいけないのか?
承認欲求を満たす上でも重要なコミュニケーションです。
では、名前を呼ぶという行為自体がダメなのか?というと、もちろんそんなことはなく、存在を承認するという上で、とても重要なコミュニケーションです。ただ、女性はその年齢に応じて“●●くんのママ”“▽▽課長の奥さん”“●●さんのお母さん”といった呼ばれ方をしますから、名前を呼ばれるという行為そのものに皆様が思う以上に敏感なのです。(実際、40歳以上の女性を対象にしたスポーツクラブでは、苗字でなく名前で呼ぶことを徹底しているところがあるくらいです。)
名前の呼び方をルール化する
部下との信頼関係を構築するためには正攻法で。
今、職場は男女はもちろん、様々な雇用形態、様々な年代、様々な価値観を持つ人がひとつのチームとなって動きますから、管理職の皆様はどんなコミュニケーションを取ることがベストなのかと日々、頭を悩まされていることと思います。名前の呼び方、媚びを売るような承認、世代を飛び越えたようなコミュニケーションではなく、仕事に応じた承認とチームメンバー全員に対してシンプルに平等なコミュニケーションを取ることがハラスメントの芽を摘みます。信頼関係は1日してならず。正攻法で、コツコツと積み重ねることが何よりも大切なのです。
それでも、なかなか上手くいかないのであれば、名前の呼び方をルール化することをお勧めします。私の関与先に、社長以下新入社員まで全員苗字+さん付けにしているところがあります。社長が新入社員を呼ぶときも、新入社員が社長を呼ぶときもです。
もちろん、皆様の職場の業種や職種、職場の風土や文化を検討した上で、ルール化してくださいね。
たかが名前。されど名前。きちんとした“承認”として活用してくださいね。