ハラスメント

パワハラの防止義務化がなかなか規定されなかった訳とは?

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こんにちは。職サポの特定社会保険労務士 森川友惠です。

パワハラの事業主に対する防止措置の義務化は平成31年5月

パワハラの事業主に対する防止措置の義務化は、平成31年5月29日に成立、令和元年6月5日公布された労働施策総合推進法第30条の2に規定されています。

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の終業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な義務を講じなければならない。

セクハラの義務規定は?

一方のセクハラは、いつ同様の義務規定が設けられたか?皆様はご存じでしょうか?

今から遡ること20年以上前、平成9年男女雇用機会均等法に定められたのが最初なのです。この20年もの開き…。何が原因か?それは、セクハラはどんな行為でも職場ではあってはならないものと、誰にでも容易に判断が可能である一方、パワハラは「指導」「育成」との線引きが非常に難しいことから、長年放置されてきたのです。

ですが、少子高齢社会、労働人口が急激な減少し、このままでは“国力”が大幅に低下し、国際社会で取り残される…。多様な働き方を認めて“働き手を増やそう”と政府が躍起になっているにも関わらず、その大切な“働き手”を減らす職場のいじめ・嫌がらせに関する都道府県労働局への相談は、8万2千件超で、7年連続で全ての相談の中でトップを独走しています。

平成30年 民事上の個別労働紛争 主な相談件数の推移  出所:厚生労働省HP

政府からすれば、“こっちは必死に人を増やそうとしているのに!企業は何をしているんだ!”という思いでしょうね。

だからこそ、ハラスメントのない社会の実現に向けて、職場のパワハラ対策(※セクハラについても同じタイミングで対策が強化されます)が必要だと、この度の法改正とつながった訳です。

適正な指導とハラスメントの狭間で

企業で働く人の仕事に対する価値観は、年々、多様化しています。ですから、後輩や部下の「指導」や「育成」に頭を悩ませているリーダーや管理職の方も多いはず。

「余計なことを言って、ハラスメントだと騒ぎたてられたくない。」

「どうせ、1年したら、この部署から異動するから、気付かなかったことにしよう」

と放置してしまったら、悪い風土が組織に沈着し、管理職の影響力はゼロ。統制のきかない組織は暴走をはじめます。暴走が一度はじまってしまったら、これを元に戻すには、相当の時間とパワーを要します。管理職として、何より大切なことは、「ダメなものはダメ」「悪いものは悪い」と言える厳格性と、ぶれいない軸で判断、行動ができる一貫性を持つということです。

皆様はいかがでしょうか?ご自身の厳格性と一貫性に自信がありますか?

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